【最新】新しい在留資格と入管法改正(後編)

  • 2018.09.03 Monday
  • 11:00

 

前回の記事(前編)では、外国人労働者を受け入れるための新たな在留資格や受入れ分野についてご説明いたしました。


後編では、来年以降急増することが予想される外国人労働者の受入れにあたり、どのような問題が想定されるのか、また、それに対して政府はどのように対処していく方針なのかについて見ていきたいと思います。

 


 

新制度により新たに来日する外国人は、2025年頃までに50万人超に上る見込みと言われています。現行制度で工場や工事現場等で働く外国人は大半が技能実習生なのですが、その総数が現在約27万人ということを考えると、いかに急増するかがうかがい知れます。

 

新在留資格『特定技能』で来日する外国人は、基本的には本国で大学等の高等教育機関(大学等)を出ていない若者たちが想定されます。そのような境遇・年齢から、初めて日本に来る方々が大半であると予想されるのですが、そこで想定される問題として挙げられるのが日本語や日本社会に対する理解不足や受入れ体制の不備等に起因する生活トラブルや文化的摩擦です。

 

若い働き手として日本で働いてくれるのはありがたいですが、日本で働くということは、当然ながら日本で生活することを意味します。

 

外国人労働者問題についてスイスの作家マックス・フリッシュが語ったという有名な言葉に我々は労働力を呼んだが、やってきたのは人間だったという一節がありますが、労働力以前に、外国人(人間)としてどう受け入れるかが重要になってきます。

 


 

 

この問題に対して、政府は出入国管理体制を見直すことで、外国人単純労働者の大規模流入に備える方針を打ち出しました。

 

具体的には、現行の『法務省入国管理』を『入国管理』に“格上げ”することで、入管政策の企画立案機能を高め、厚生労働省等の他省庁と調整する司令塔機能をもたせると言います。

 

「局」が「庁」になったところで何が変わるのでしょうか?

現行の入国管理局が法務省の内部部局(内局)、つまり法務省の中の一部局であるのに対して、入国管理庁となると法務省からは独立した「外局」となるため、より専門的・強権的で独立性の高い事務を行うことができるようになります。(有名な外局に「特許庁」「文化庁」「気象庁」「公安調査庁」等があります。)

 

とは言え、ハコを変えただけでは意味がありません。

そこで、政府は入管実務にあたる入国審査官や入国警備官の人数も来年度以降段階的に増やし、業務量増加に備えるとしています。

そして、その動きは早くも数字に現れています。

最新の報道によると、人事院は8月21日、2018年度の国家公務員一般職試験(大卒程度)に合格したのは7782人で、前年度より577人増えたと発表しました。

筆者は毎週東京入国管理局に出向いていますが、来年度以降、ニューフェイスの新人審査官が増えると思うと、入管の風景も随分と変わるのだろうと想像されるのです。

 

その他の受入れ体制整備としては、受入れ企業、又は法務大臣が認めた登録支援機関が支援の実施主体となり、外国人材に対して、生活ガイダンスの実施、住宅の確保、生活のための日本語習得、相談・苦情対応、各種行政手続に関する情報提供などの支援を行う仕組みを設けると言います。

 


 

なお、今回報道で「入国管理庁」と聞いたとき、筆者はどこかで見覚えがあるなと感じたのですが、じつは我が国には過去にも「入国管理庁」が存在したのですね

(古い入管資料を調査した際に目にしたのが印象に残っていたようです。)

 

それは、今からさかのぼること実に67年前…。

 

 

写真は旧外務省外観(出所:「まちかどの西洋館別館・古写真・古絵葉書展示室」)

 

戦前、日本の出入国管理は内務省が管轄していましたが、戦後しばらくは連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の管理下に置かれていました。

しかし、1950年10月に外務省の外局として「出入国管理庁」が設置され、翌1951年11月に同庁が廃止され、同じく外務省の外局として「入国管理庁」が設置されました。

(当時は法務省ではなく、外務省の外局だったのですね!)

 

ところが、その入国管理庁も翌1952年8月には廃止されてしまい、法務省の内部部局へ移行し「法務省入国管理局」として再編され、現在に至ります。

 

わずか9ヶ月間で姿を消した幻の入国管理庁が、70年近く経って法務省外局として復活するわけですね。

 

そう思うと少しロマンも感じますが、現実問題はシビアな表情で目前に迫っています。

入国管理庁が、名実ともにその統率力を発揮することで、適正な在留管理が徹底されるとともに外国人の人権が護られ、私たち日本人と外国人が円滑に共生できるような社会が実現されることを望むばかりです。

【最新】新しい在留資格と入管法改正(前編)

  • 2018.08.22 Wednesday
  • 11:26

 

労働市場において「人手不足」という言葉をよく耳にするようになりました。

 

日本政府はこの人手不足を解消するための手段として、

外国人材の新たな受入れを進めています。

 

日本の入管行政では、これまでも多くの外国人の就労を認めており、

現在は約128万人の外国人が日本で働いています。

※そのうち一番多い46万人は永住者等の身分に基づく在留資格、

 二番手は30万人で留学生等の資格外活動許可によるものです。

 

しかし、これまで就労ビザが認められてきたのは高度で専門的・技術的な分野に限られており、

いわゆる単純就労分野における就労ビザ取得は認められてきませんでした。

 

そのため、人手不足が深刻といわれる建設業や農業、介護等の分野で外国人を雇用しようとしても、就労ビザは取得できないため、技能実習生として一定期間雇用するか、活動内容に制限のない永住者等の身分系資格や、留学生等を資格外活動許可の制限内で働かせるしかありませんでした。

 

ところが、そのような状態にも限界が来てしまったようです。

特に建設業等の分野では就業者の高齢化により数年後には定年による一斉退職が懸念されているため、現場からは「待ったなし」の声が極まりつつあったのです。

 


 

 

そこで、政府はついに単純就労分野での受入れに大きく舵を切ることにしました。

経済財政運営と改革の基本方針2018』(いわゆる骨太方針)によると、

「従来の専門的・技術的分野における外国人材に限定せず、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受け入れていく」とし、そのために「就労を目的とした新たな在留資格を創設する」とのことです。

 

その新たなビザは、『特定技能』と命名される見通しです。

(これまでも『特定活動』や『技能』、『技能実習』というビザが存在しているので、なんだか混同してしまいそうですが…。ビザは短く略称で呼ばれる慣習があるため、『特技』とでも略されるのでしょうか。)

 

現在議論されているのは受入れ分野です。

当初は5つの分野(建設・介護・農業・宿泊・造船)に限定されていましたが、最新の報道によると、更に金属プレスや鋳造などの金属加工業や飲食業、食品加工業や漁業なども追加し、最終的には15分野ほどに拡大する方向で検討されているようです。

当初5分野の報道を受けて、「それなら我々も!」「私たちも!」と政府への陳情が相次いだことによるようです。

 

そうなると、もうほとんどの産業分野で受入れが認められるように思われます。

政府は当初5分野の時点で、将来的に50万人超の新規受入れを見込むとしていましたので、それが一気に15分野に拡がるとなると、優に100万人は超える推算もできるわけです。

 

工事現場はもちろんのこと、飲食店にも、ホテルにも、畑にも漁港にも、若い外国人たちの姿を見る日は遠くなさそうです。

そういった若い労働力が日本の経済社会基盤の維持・活性化のために貢献してくれると思えばとてもありがたいのですが、街の表情が変わるのは間違いなさそうです。恩恵に期待するばかりではなく、受入れ側となる私たちにも準備と覚悟が求められていると言えそうです。

 


 

さて、それではこの特定技能』ビザを取得する条件は何なのでしょうか?

受入れ分野も確定していない以上、もちろんまだ議論段階なのですが、

現時点では、取得条件として下記2パターンが検討されているようです。

 

ー入れ業種で適切に働くために必要な知識・技能及び日本語能力を有していること。

または

技能実習(3年)を修了していること。

 

,砲弔い討蓮業所管省庁が定める試験(日本語能力については日本語能力試験等)によって確認するとされています。つまり、所定のテストに合格すれば、たとえ学歴・職歴を有していなくても就労ビザが取得できるいうことのようですね。

 


 

この新しいビザは、来年(2019年)4月からスタートします。政府は来春の制度開始に向け、今秋に想定される臨時国会に入管法改正案を提出する方針と言います。

 

正味あと半年ほどしかないにも関わらずあまりに未確定要素が多いわけですが、入管行政が事実上単純就労へ門戸を開いたことがとても大きな変化であることは間違いありません。

(筆者が行政書士業界に入った頃にはとても想像できませんでした。個人的には、外国人登録制度が廃止された2012年7月改正に匹敵する、もしくはそれ以上にインパクトのある大改正になると思います。)

 

しかし、今回の改正には反対意見も根強く、制度上の担保強化の必要性が主張されています。

次回の後編では、「本当にそんなにたくさん受け入れて大丈夫?」という観点から、もう少し掘り下げて検証していく予定です。

 

災害時の在留資格申請について

  • 2018.07.25 Wednesday
  • 18:31

この度の西日本豪雨により亡くなられた方々にお悔やみ申し上げますとともに、

被災された方々に謹んでお見舞い申し上げます。

一日も早い被災地の復興を心よりお祈り申し上げます。

 

このような災害時、日本語が不自由だったり、

来日間もなく日本の文化や生活習慣への理解が不十分だったりする外国人の方は、

きっと日本人以上に大きな不安や恐怖を感じてしまうことでしょう。

今回被災された方々の中にも、多くの在日外国人の方がいらっしゃるかと思います。

万が一の時に備え、日頃から災害時に役立つ知識を身に付けておきましょう。

 

もし災害時に在留期限を迎えてしまい、在留期間内に在留期間更新許可申請や

在留資格変更許可申請を行うことができなかった場合は、どうしたらいいのでしょうか?

退去強制されてしまうのでしょうか?

 

安心してください。災害等で本人に責のない事情により在留期限を経過してしまった場合は、

その在留期限経過のみを理由として退去強制手続が執られることはなく、

申請が受理されることになっています。

申請できる状態になった後、速やかに最寄りの入国管理局に相談してください。

なお、これは災害時に限らず、病気や事故等の場合についても、

同じ対応がとられることになっています。

 

また、災害時に在留カードもその他の身分証明書もすべて紛失してしまった場合は、

どうしたらいいのでしょうか?

 

在留カードを紛失した時は、最寄りの入国管理局で在留カードの再交付申請を行ってください。

通常は、紛失したことを証明できる資料として、

警察で発行してもらう遺失届出証明書や盗難届出証明書の提出に、

身分証明書の提示が必要とされていますが、

災害時の場合は、罹災(り災)証明書があれば、身分証明書がなくても手続きができるようです。

また、罹災証明書がなくても、事情を説明すれば再交付してもらえることもあります。

加えて、避難している方については、お住まいの住所を管轄している入国管理局だけでなく、

避難先近くの入国管理局でも手続きすることが可能です。

 

今回も広島入国管理局の公式ツイッター(@IMMI_HIROSHIMA)では、

【豪雨災害にあわれた外国人の方へ】と、

「入管の手続きをしたいけれど書類が揃わない、在留カードがなくなってしまったなど、

入管の手続きに困っていたら、電話で相談してください。」

とツイートされており、被災外国人の方に対して相談するよう、呼びかけています。

また、在留カード再交付の案内もあり、

「身分を証明する書類がなくても、手続きをすることができます。

被災証明書や罹災証明書を持っていたら、持ってきてください。」とツイートされています。

 

ちなみに、2011年3月の東日本大震災の時には、法務省告示により、

同地震発生時点で青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県の区域にいた方等で、

かつ、在留期間が2011年8月30日までに満了する在日外国人に対して、

何ら手続きを経ることなく、在留期間が同年8月31日まで延長されるという措置がとられました。

 

以上のように、災害時には例外的な対応・措置が講じられており、

オーバーステイ等の状態に陥ってしまう可能性は少ないので、

そこまで心配する必要はないかもしれませんが、

いざ災害が自分の身に降りかかってきた時には、

大きな不安に押しつぶされ、冷静さを失い、パニック状態に陥ってしまうかもしれません。

そして、災害はいつ、どこで自分の身に降りかかってくるか分りません。

 

だからこそ、万が一の時に備え、日頃から災害時に役立つ知識や情報を得たり、

在留期限に余裕を持って申請を行ったりするように心がけてみてはいかがでしょうか?

 

 

 

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